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自分のホームページを持とうと考える人は多い。その際、悩むのはテーマだ。兵庫県伊丹市の男性は、「我が町」の歴史や文化をテーマにし、退職後の人生の楽しみにしてしまった。伊丹には、昆陽池のほとりや有岡城跡など、町のあちこちに歌碑がある。男性は歌碑を見つけては写真に撮り、作者や場所などの情報とともに掲載。その数は67に上る。 写真=昆陽池のほとりにある歌碑 |
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| 歌碑巡り まるで宝探し | |||
「何を伝えればいいのだろう」。兵庫県伊丹市に住む山本俊夫さん(63)は、阪神大震災が起きた直後のころ、どんなホームページを作ろうか、考え抜いた。 当時、勤めている電機メーカーでコンピューターを扱い、家に帰っても趣味はパソコン。受話器に電気信号を直接送り込む「カプラー」の時代から、自宅でパソコン通信を体験していた。そんな〈ハイテク通〉が「ホームページを立ち上げよう」と決意したものの、コンテンツ(中身)を何にすればいいのか、思いつかなかった。
パソコン以外で、山本さんの趣味は街の散策だ。伊丹市教育委員会主催の「ふるさと健康ラリー」も九二年からずっと参加していた。この催しは、有岡城跡、和泉式部の墓など伊丹市内の遺跡や名所など約三十五か所のポイントを一日でどれだけ回ることができるかを競うスタンプラリー。このときに撮りためた写真が何枚もあった。どれも伊丹市の名所旧跡ばかり。写真付きで紹介すれば、長年住みなれた街の様子を発信できると思ったのだ。 ◆デジタル拓本、名所を紹介 「はじめは自分のページを持てたことだけで満足でした。それがもっと情報を伝えたいという気持ちに変わっていったんです」 そういう山本さんが次に興味を持ったのは伊丹市内約六十か所に設置されている歌碑だ。「あるとき、歌碑の拓本をしているところに出くわしたんです。自分ならデジカメで写すのにと思いましてね」 和紙を石碑に丁寧に押し当てて、刻まれた文字を写し取る拓本は、千年以上前、中国で考え出されたとされる複写技術。山本さんは“デジタル拓本”に挑戦することにした。 ガイドブックとデジタルカメラを手に自転車に乗り、歌碑を探して回った。路地の奥、公園の植え込み、林の中、堤防の斜面……。九九年初夏、休日を利用したこの作業はまるで宝探しのようだった。 二〇〇一年六月、伊丹市宮ノ前に「伊丹郷町館(ごうちょうかん)」が完成した。同じころ、山本さんも長い会社生活にピリオドを打った。 この施設は、有岡城の城下町として発展した「伊丹郷町」のにぎわいや町並みを再現。年代が判明している中で国内最古の酒蔵がある、江戸時代初期の町家をそのまま展示室にして所蔵の調度類を展示、当時の暮らしや酒造りを紹介している。訪れた山本さんに、当時の生活がまざまざと伝わって来た。この施設をネット上で再現したいと思い、新たに「伊丹郷町」というコーナーも加えた。昨年八月のことだ。 スタンプラリー、歌碑、そして伊丹郷町館……。気が付くと最初、何をコンテンツにするのかを悩んだことがうそのように、ホームページは充実していた。 山本さんは、「我が町」の文化や歴史を発信してきたホームページを通じて知り合った仲間やかつての職場の同僚らと、メールで近況や情報をやり取りし、時に「オフ会」と称して飲み会や食事会を開く。 地域の文化を発信、自ら更新し続けたホームページによって、山本さんの第二の人生は広がった。
(山本 由典)
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